TED式プレゼン術からわかるプレゼンのポイント3つ

プレゼンを行う中で、参加者が関心なさそうにあくびをする光景を見るほど、悲しくなる状況はないでしょう。自分達が自信を持って提供するプロジェクトなのだから、積極的にプレゼンを聞いてほしい所。しかし、どんなに熱意のこもったプロジェクトでも、その伝え方を間違えてしまうと、参加者の心に届かないプレゼンになってしまいます。そこで、今回はマイクロソフトのビル・ゲイツ氏やアップルのスティーブ・ジョブズ氏など、様々な著名人が心惹かれるプレゼンを行うTEDから、プレゼンのコツについて紹介していきます。(今回の内容は、カーマイン・ガロ(2014)「TED 驚異のプレゼン」を参考にしています)

1.情熱を抱くこと

TEDにおける、心惹かれるプレゼンの条件の一つは、情熱を表現する事だといいます。情熱があれば一流のパフォーマンスにつながるが、情熱がなければ無意味なプレゼンになってしまうとか。その理由は、プレゼンを行うスピーカーの気持ちが、参加者の気持ちを動かすからです。

書籍「TED 驚異のプレゼン」のなかで、エイミー・マリンズさんの話があります。彼女は生まれて間もない頃に両足を失いました。一般的に両足が欠損した人のことを障がい者と考える事が多く、その障害をカバーするために義足をつけるとしています。しかし、彼女は自分のことを障がい者と考えず、また義足の事を”障害をカバーするための道具”とは考えませんでした。彼女にとって義足とは、生身では得られない能力を得る手段であり、人間の可能性を引き出すものでした。故に、彼女は状況に合わせた複数の義足を持ち、短距離走の選手やモデルとして、大いに活躍しました。そして、TEDではその義足に対する熱い思いをプレゼンしました。

情熱とは、一時的な思いでなければ、趣味でもありません。自分の根幹をなすものであり、アイデンティティです。そして、それこそが最も伝えるべき内容だと、書籍の中では紹介されています。

2.知らない事を教える

自分が知っている事を、相手が自慢げに紹介している時ほど、興醒めする事はないでしょう。そして人は、知らない未知の世界を目にした時こそ、最も興味を惹かれるものです。故に、プレゼンを行うときは今までとは違う切り口や、目新しい解決法を提案しましょう。

プレゼンを行う時、特にメーカーがスピーカーを行うときは、どうしても「こんな機能を持っています」「こんな事ができます」という、性能面に話が偏ったり、自分の話したいことだけを伝えてしまいます。しかし、どんなにいろんな機能を詰め込んだ所で、「つまりどういう事?」となって、参加者にとって興味の惹かれるプレゼンとはなり得ないでしょう。

例えば、アイリスオーヤマから発売されている乾燥機付き洗濯機は、面白い謳い文句でCMが制作されています。通常、乾燥機とは通常衣類を100%乾かすために使用されるものです。しかし、アイリスオーヤマから発売されている件の乾燥機付き洗濯機は、80~90%しか衣類を乾燥させません。あえて完全に乾燥させないことで、皺のつきにくい部屋干しを実現させているのだとか。実はこの乾燥機付き洗濯機、最初は販売価格を落とす目的で、100%ではなく80%乾燥できるように開発しました。しかし、「80%乾燥にすることで、価格を安くしました」といっても、誰も心惹かれません。しかし、CMでは”100%ではなく、80%に意味がある”という形にすることで、面白い切り口のCMとなっていました。

”価格を安くするために機能を落とす”というのは分かりやすい理論であるが故に、なんの新しさも感じられず、心も惹かれません。故に、当然のことを当然のように伝えるのではなく、新しい切り口を探してみましょう。

3.記憶に残す

プレゼンは、情報をたくさん盛り込んで、より沢山話せば良いという訳ではありません。

TEDには、18分以内にプレゼンを終わらせるルールがあるとか。というのも、プレゼンを傾聴する参加者は話が長くなればなるほど、情報を頭の中にとどめておく負担が増え、それがストレスになるからだとか。その結果、プレゼンの後半には傾聴する姿勢が崩れ、少し時間が経つと内容をほとんど忘れてしまいます。

ジョン・F・ケネディがアメリカ大統領に就任する時、演説に使った文字数はわずか1355ワード(日本語で約2700文字)で、歴代大統領が行った演説の平均文字数の半分だとか。ケネディは、演説を短くまとめる事が重要だと知っていたからだと、書籍では紹介されています。

プレゼンを行う時、どうしても伝えたい事があると長くなってしまいますが、当然ながら覚える事が増えるほど、集中力は落ちてしまいます。故に、短くても熱意の伝わるプレゼンがベストだと言えるでしょう。

まとめ

先日、イェール大学助教授の成田悠輔氏のEBPMに関するプレゼンを聞く機会がありました。そのプレゼンでは、本題に関する話は全体の4分の1近くで、大部分はその本題を話すための導入。しかし、退屈さを感じさせない、面白いプレゼンでした。

情熱を抱くこと・知らない事を教える・記憶に残す。シンプルな事であるが故に、意外と難しいポイントであるとも言えます。もしプレゼンを行う機会があれば、ぜひ今回紹介した内容を意識してみてください。(また、書籍の中には他にも重要な事が紹介されているため、余裕があれば参考にしてみてください)

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